「弥栄、今少しいいか?」
「え?あ、はい!またね兵助。」
「先輩、」
「我が儘言わないの。ね?」

呼ばれ立ち上がった**は、膝枕をしてもらっていた兵助の頭を撫でて土井の後を歩く
連れてこられたのは学園長の庵。何事だろうと促されるままに座った弥栄は、食堂のおばちゃんと小松田から調査を頼まれたことを告げられる

「調査、ですか。」
「二人が言うには、どうも**は一切の被害者であると。」

ことりと首を傾げた弥栄に、食堂の被害に始まる**がやったとされる件の真相究明が課せられた

弥栄にはこれがチャンスに思えた。ここで完全に**が悪だと分かれば弥栄の完全勝利
実際弥栄はそれらに関して何もしていないのだから、自分が疑われる証拠があがるはずもない
一応形だけでもとそれから数日を調査にあてた弥栄は改めて学園長の庵に呼ばれ、そこには先生方といつも一緒にいる五・六年生十一人が揃っていた

「報告を。」
「は。」

そして弥栄の口からでたのは偽の目撃証言。報告の中にはしっかりと弥栄自身は**を擁護するという言葉がちらちらと混じり、先輩は優しすぎるという誰かの声に内心ご満悦で報告を終える
少しの間。学園長が頷けば、学園長の隣に二名のチャミダレアミタケ忍者隊が現れた
へ?と思わず首を傾げた弥栄は、内一人が報告を纏めた巻物を学園長に渡し一人が内容をつらつらと口にするごとに目を見開く

「くノたま、忍たま、先生方の目撃証言を併せても、**という問題の彼女が事を起こした証拠はあがりませんでした。」

それより気になったことがと追加したくノ一は、弥栄に不思議そうに問いかけた

「彼女に頼まれもせず手伝い、断られたにも関わらずやるべきことを取り上げ、そして親切心を周りに訴えた理由がおありで?」
「なっ、私はただあの人が大変だろうからと」
「なら彼女は頼み手伝ってもらい、断らず分担を願ったのでは?仕事で関わった方からはそういう性格だと読みとれましたが。」
「っ、私は、だから、」
「わかりました。」

完全なる親切でしたと仮定しましょうと前置し、くノ一は言葉を続ける

「ならば、なぜ周りに誤解をさせたのでしょう。最上級生の貴方なら、誤解を呼ばずに自分が手伝いたいから手伝っているのだと周りに理解させることができましょう。できぬのなら、勉強をし直して頂きたい。」

ガリっと爪を噛んだ弥栄は、弥栄?と不安そうに呼ばれ、はっと隣をみた
そこにあるのは不安や疑心やまだ信じている目。咄嗟にやだな、本当に親切だったのと笑った弥栄に、くノ一二人が笑う

「下手な演技。」
「私共は依頼をされただけですから。では学園長先生、以上で報告は終いです。」
「うむ、ご苦労じゃった。」

しゅぱっとくノ一二人が消えたあとの庵で、弥栄はなんで上手くいかないのよと爪を遠慮なしに噛む。学園長や先生方からの目に耐えられなくなったのだ
元々ストレス耐性がないためか、諦めも早い。開き直って親切のなにがいけないの?自分の頑張りを訴えて何がいけないのと学園長に問う
学園長は少し考え悪いことではないがとおいて、やり方じゃと悲しそうに目を伏せた

「人を蹴落とし自分をよくみせるための親切など、偽善にも劣る。お主は忍び以前に人として欠落しているものがあるようだの。」

見抜けなかった儂の罪かと呟く学園長に私悪くないこいつらが勝手にやっただけだと豹変に困惑する五・六年生を指差し、弥栄は私だけ非難されるなんておかしいと叫ぶ

「尤もじゃ。よって、弥栄を退学処分。他の者は停学に処す。みな己の行いを反省し、成長するがよい。」

儂は当分娯楽を禁止し先生方は減俸じゃとその場で言い渡した