息子(オリキャラ)が産まれてるよ!
話がいつにも増して急ピッチで進むよ!
「ははうえ、いたいいたい?」
「ん?大丈夫、痛くないよ。」
「ほんとう?あしいたくない?」
足?と自分の足を見た**は、瞬間息を飲み叫びかける
透けている自分の足をおさえながら、何が起きたのかと立ち上がろうとして崩れた。手までが、透け始めていたのだ
「・・・おばあちゃんは、明日帰ってくる。」
「?うん。」
「お父さんには、おばあちゃんが伝えてくれるはずよ。」
「うん。」
「伝えてちょうだい、お世話になりましたって。お父さんが、利吉さんが私の一番愛する男性だって。」
「うん、わかった。がんばる。」
「貴方は、私の一番愛おしい子。火を使っては駄目よ。おはぎは食べてしまっていいから。おばあちゃんを待って、大人しくしていてね。」
名残惜しむかのように消えた**に、息子は首を傾げて落ちた鞠を拾って抱えた
翌日、帰ってきたのは母と利吉の二人。ちょうど仕事を終えた利吉は母と会ったための帰宅だ
「おかえりなさい。」
「ただいま。お母さんはどこにいるのかしら。」
「いないよ。」
「畑にでもでてるのか?」
「きえちゃった。おせわになりましたって、いってって。」
顔を見合わせた二人に鞠をコロコロとしながら、息子はあのねと一生懸命状況を伝える努力をする
あしがないないして、てがないないして、ぜんぶなくなっちゃて、ははうえはだいじょうぶだからって。そう頑張って訴える息子を抱きしめ、漠然と理解した母は大丈夫、おばあちゃんがいるからねと一人寂しく心細かったであろう息子の頭を撫でた
じわっと涙を浮かべははうえ、ははうえどこと泣き出した息子に声をかけてやれと母は利吉を振り返るが、視界に入った利吉はおもむろに全部の部屋を開け放ち押し入れを空にし天井裏にのぼりネズミを残らず追い出す勢いで**を探す
いないよ、ちちうえ、ははうえきえちゃった。そう泣きながら気でも触れたかのように家中を漁る利吉にしがみついた息子は、ぐるっと振り向かれ肩をつかまれいたいと叫んだ
「なぜ止めなかった!!」
「ひっ、」
「利吉さん!」
「**っ、**がいないなんて私には・・・!」
**をどこへやった、なぜ**がいないんだ!そう怒鳴りつける利吉に怯えきり失禁までする息子を引きはがし、母は強く利吉の頬をぶつ
ふらっと後ろに尻餅をついた利吉は、そばにいなければ守れない、**のいない人生など考えられないと呟き、そのまま姿をくらませた
時折、前にも増して頻度は低く夜中に帰ってきては、息子の枕元に菓子を置いてまた出て行く
息子は利吉の姿が恐ろしすぎたのか、暫く夜泣きなどの問題が出ていたが、それも自然と解消され利吉からの菓子に素直に喜ぶようになるまで数年あまり
**が消えた頃より、フリーの売れっ子忍者である利吉が鬼のようだといわれはじめた
最初はなんのことだと首を傾げていた利吉を知る者も、会えば途端に理解する。実際忍術学園の卒業生が利吉と刃を交え、人が変わったと命からがら逃げる状態
死に急ぐように仕事をこなし、死に逝くように危険を省みない。伝蔵や母が何を言おうが聞く耳持たず、ただでさえ職業柄生傷の絶えない利吉の身体は悲惨なことになっていた
そんな利吉に、**からの伝言を伝える機会が息子に巡ったのは、**失踪から五年。母より忍術を教わり夜遅くまで起きるようになっていた息子と帰ってきた利吉がばったり出くわしたのだ
「・・・父上、お帰りなさい。」
「ああ。」
「あの、」
ちらと息子を見ただけでもう菓子ではないほうがいいかと呟いた利吉は、呼び止められ部屋の戸に手をかけたまま立ち止まる
振り返らぬその背に、息子は一番だと言ってましたと、長年溜めていた言葉を吐き出した
「意味がわからないが。」
「利吉さんが私の一番愛する男性だと、母上が伝えてほしいと・・・あのとき、父上が恐ろしくて伝えられず、申し訳ありませんでした。」
「・・・そうか。」
ありがとうと言って戸を開けた利吉は、きらきらと光るように見える鞠に固まる。その鞠は、**が消えた時に最後持っていた物だ
「・・・**?」
「えっ、母上?」
思わず鞠を拾いあげた利吉はほんのり温かい鞠に**?とまた呼びかける。けれどきらきらとしていた光は消え、力の抜けた手から鞠は床へと落ちた
もう会えないのかと震えた声で呟く利吉になんと言っていいかわからず、息子は黙ってコロコロと転がった鞠を眺める
「母上、お戻り下さい・・・」
忽然と姿を消した**は記憶の中で柔らかく笑い自分を呼び抱き締めてくれた。いい匂いがして、温かくて心地よかった。また**に会いたいと思うのは当たり前だろう、成長しても、まだ十に満たない子どもなのだから
「・・・あ、れ?」
ふっと、それが当たり前のようにすんなりと耳に届いた声に息子は周りを見回し勝手口に立つ姿にあっ!と叫び、利吉はその声に部屋からでると、同じく固まり、そして流石に起きてきた母も目を見開く
「私、帰って、きたの・・・?」
不思議そうに家の中と外を見比べ、一度家から出ようとした洋服を着る**の手首をつかみ、利吉は驚く姿に構わず抱き締めた
利吉さん?と恐る恐る呼びかけた**に今までどこにと絞り出した利吉は、元の世界にとぎゅうぎゅうに抱きしめられ苦しそうに告げる
「もう二度とっ、私の手の届かないところへ行かないでくれ・・・!」
「は、い・・・ごめんなさい、」
「母上、なんですか?」
堪えきれず声をかけた息子にぱっと顔をあげた**は、隙間から息子を視界におさめると嬉しそうに顔を綻ばせる
おいでと手で合図すれば、ははうえぇっと泣きながら、息子は走って抱きついた
「置いていってごめんね、もういなくならないからね。」
「ははうっ、わぁああああん!」
右手は泣く息子の頭を撫で、左手は未だ強く抱き締めてくる利吉の背中を撫でる。それから解放されたのは十分は後で、やっとお帰りなさいと微笑む母に**は頭を下げることが叶ったのだった
「今日から暫くは、私の腕の中で寝ること。」
「いいえ母上、ぼくを抱きしめて寝て下さい。」
利吉と息子で私のぼくのと取り合うのをみながら、**は帰ってこれてよかったと母の煎れたお茶を久しぶりに飲みながらほっと息をついた