44 整理がつきました

「数馬君、包帯を巻きなおしてほしいんだ。」
「いいですよ!」

朝食後、解いた包帯を手に保健室に入れば
おはようございます!と笑顔の数馬が近付いてくる
昨日までと違い、どこかスッキリした笑顔の数馬に
これで保健委員会も解決かなとホッとした

「スッキリした?」
「はい。あ、座って下さい。」

傷、大分良くなってきましたね。と、包帯を巻く様子は手慣れたものだ
あっという間に巻き終えると、きっちり巻かれた包帯に気をつけながら服を整える

「善法寺先輩に、また委員長をやってもらえるでしょうか?」
「保健委員の皆が望むならね。」

授業に遅れないようにね。と頭を撫で、教室へ向かった

教室に入れば、既に仙蔵たちが座っていて
個人指導は、あれはあれでよかったなと少し笑う
学級崩壊が起きていた最中の授業内容は各自自習し、教科書は先へ先へと進み
午後は授業がないとのこと、午前の授業が終われば皆我先にと食堂へ向かい
午後はやはり鍛錬に明け暮れるのだろう

「***、昼食いかないか。」

トントンの教材を整え立ち上がれば、そばにきた仙蔵に頷くも
仙蔵の背後霊のような文次郎に突っ込まないわけにはいかず

「斜堂先生みたいになってるよ、文次郎。」
「左門に拒絶されたらしいぞ。」
「あぁ。左門たち死人みたいになりながら帳簿付け頑張ってたからね。」

一朝一タじゃ許せないんじゃない?と笑えば、それがトドメだったのか
苦無を頭に装着して窓から飛び出していってしまった

とりあえず、横で笑いをこらえるのを失敗し、うずくまって笑っている仙蔵が落ち着くのを待った


食堂に並べば、目の前にいた伊作の肩を叩く
驚きながらも***。と笑った伊作は、数馬と話したのか
あのね、と委員会復帰を願う伊作に二つ返事で頷けば
俺も。と伊作の前にいた留三郎が手を挙げる

「昨日作兵衛君にお説教されてたもんね。」
「な、なななんで知ってんだよ!」

うぎゃ!と顔を赤くするあたり、後輩からの正し過ぎるお説教はかなり堪えていたようだ
通りがかっただけだよ。と宥め、留三郎に用具委員会を任せる旨を伝えた

「もう少しで、形だけは元に戻るね。」

四人で一緒の机につけば、座ったついでにぽつりと落とした言葉に三人に一斉に見られた

「え、なに?」
「聞いてもいいか。」
「どうぞ。」
「また、頻繁に帰省するのか?」

するよー。と煮物を食べるのをじぃっと見つめられ、もぐもぐとしながら仙蔵を見返す

「タソガレドキと関係があるのか?」
「ないよ。」
「嘘だな。」
「嘘だね。」

からかうように話すも、無表情で食事を続けていれば
仙蔵の手が箸をもつ右手首をつかむ

「どういう関係だ?」
「雑渡昆奈門。彼は養父なの・・・だから、彼は助けてくれた。」
「養父・・・」
「雑渡さんの・・・」
「本当なのか?」
「本当だよ。」
「***委員長助けて下さい!」
「うぎゃっ!」

ダダダダダ!と食堂へ駆け込んできた三之助に突進され、その勢いのまま床に倒れ込み後頭部を強打した
痛い。と呟いて上体を起こせば、食堂に入ってきた小平太と滝夜叉丸と目が合う
滝夜叉丸のほうは、あと一押しで魂が抜けそうだが

「三之助!」
「うわ、わ、」

小平太が呼べば、面白いほどにバタバタと背後に隠れる三之助に首を傾げる

「小平太どうかした?(三之助、どうしたの?)」
「三之助に用があるんだ!」
「(七松先輩が追いかけてくるんです。)」
「(庇った方がいい?)」
「(庇うというか、七松先輩をひとまず落ち着けてほしいんです。)」
「小平太、三之助に用があるなら私を通してくれないかな?三之助は委員会の後輩なんだ。」
「わたしの後輩でもあるぞ!そうだ***、わたし委員会に戻りたいんだ。」
「四郎兵衛君と金吾君には許してもらえたの?」
「おう!」
「はい。」
「三之助君には?」
「謝ったら逃げられたぞ。」

三之助は小平太から暴力を加えられていた
飄々としているが真のしっかりとした三之助は、他の三年より「反抗的」だったのだろう

小平太は暴君の名が相応しいほどにパワフルだ
恐怖と苦痛は計り知れない

「ならもう少し待ってよ。君からの暴力は下手をしなくても死ぬよ?それを受けて簡単に許せるわけないじゃない。」
「っ・・・なら、どうしたらいいんだ・・・?」

天女様がいなくなってからの数日、散々謝り倒したのだろう
バカみたいに後輩を大事にしていたし、体育委員会でやるマラソンもバレーも楽しみにしていた小平太には限界だったのか

「わたし、は・・・また三之助たちと委員会をしたいんだ!」

大きな丸い目から涙が零れ
それは止まらず、ぼろぼろと落ちていく

近くにいた滝夜叉丸や三之助、見守っていた仙蔵たちも目を見開き驚いた
騒がしいのを叱ろうとしていた食堂のおばちゃんは、調理場に戻っていってしまう

「泣くなんて卑怯です・・・」
「す、まんっ・・・」

ぐしぐしと涙を拭うも止まらない涙に、滝夜叉丸が口を開く

「私のことは、許さなくても構わない。だから、七松先輩のことは許してほしい。」
「よしわかった。とりあえず食堂からでよう。」

冷めたご飯をかきこみ食器を返却すると
三之助の手をつかみ、ほら行くよと小平太と滝夜叉丸の肩を叩いた