43 昼寝ができる程度には、暇

朝の一件で朝食を食べそびれ、休みだし町に行こうかと支度をし
門に向かい歩いている途中、迷子の三之助を保護した
聞けば、今夜ある忍務の打ち合わせを藤内としたいらしく
藤内を探し回っていたらしい・・・本人が言うには

「一緒に探そうか?というか、探すよ。」

そう言って手をつないでまずは三年長屋
次に食堂、教室(授業ないが)、図書室とみてまわり
辿り着いた作法委員の倉庫の戸を開けかければ

「すまなかった。」
「すいませんでした。」

聞こえてきた声と、隙間から見えた光景に思わず目をつむる

「(藤内いたよ。)」
「(なんで矢羽音なんですか?)」
「(みてみ。)」

コソッと覗いた三之助が、あー。と声を出してしまった
瞬間、こちらをバッとみた仙蔵と目が合う

「(逃げよっか。)」
「(立花先輩プライド高いですからね。)」
「***!次屋!」

そっと戸をしめて反転したはいいが、バン!と勢いよく戸が開き逃走は断念せざるを得なかった

「・・・どこから見ていた?」
「何もみてな」
「***委員長はすまなかった。辺りからです。」

空気読んで。お願い。と心の中で涙し、仙蔵に引っ張られるまま三之助と中へ入る

「***委員長と三之助じゃないですか・・・」
「三之助が藤内に用があるんだって。」
「***。」
「なに?土下座なら見なかったことにするから。」
「違う。」

三之助を置いて帰ろうとすれば、掴まれたままだった手を握る力が強くなる

「私を、また作法委員会に戻してくれないか。」
「「ぼくたちからもお願いします。」」
「お願いします。」
「私は構わないよ。」
「僕も戻ってもいいですか〜?」
「喜八郎は除名なれてないから、戻る戻らないじゃないよ。」
「そうですか。」

ひょい。と、どこからともなく取り出した踏鋤と手鋤を両手に
喜八郎は外へ出ようと立ち上がった

「喜八郎、どこへ行く。」
「ターコちゃんたちを掘りに行ってきま〜す。***先輩、是非落ちて下さいね。」
「嫌だよ。」

切り替え早いというか、マイペースというか
まぁこれで、作法委員会は大丈夫だろう
三之助も藤内を見つけたことだし、と今度こそ倉庫を出て
青空を見上げて笑った

町へでるという気分ではなくなってしまったため、昼食まで会計委員の今回臨時出費となった帳簿の確認でもしようかと歩いていれば
用具倉庫から微かに漏れる声にまさか喧嘩かと走る
けれど、聞こえてくる声はどうやら作兵衛のもので、内容はお説教のようなものだ

(怒られてるのは留三郎かな。)

時々聞こえてくる頷く声にそう判断し
予定通り会計委員の部屋へ向かった


カタ。と筆をおき、ぐっと伸びをすれば
夕日が染めた障子を眺めて重くなる瞼をこする
集中し過ぎて昼食まで逃し、今日はついてない

(ねむ、い・・・)
「***先輩、」
「ん・・・?はい、」

戸が開くのをぼんやり見ながら、のそのそと帳簿をとじて重ねる
そして、横に正座した後輩に顔を向けた

「どうしたの?三郎。」
「・・・学級委員長委員会のことで、伺いました。」
「いいよ。三郎を委員長代理に戻すね。」
「あ・・・」

学級委員長委員会解決だ。とずるずると寝そべった

「まだなにか問題あるっけ?」
「お、怒ってないんですか?」
「学園長の部屋で言ったじゃない。」

よく知る上級生の面々がいた学園長の部屋で、確かに怒ってないと言った
言ったからこそ、仙蔵や小平太なんかは謝罪を口にしない
怒ってないのに謝られても困るだけなのだから
文次郎や兵助はんかは、謝らなければ気の済まないタイプだからわかっていても謝罪を口にするが

「・・・ありがとうございました。」
「あははっ、うん。三郎。」
「なんでしょう?」
「眠いんだ、寝ない?」
「は・・・?」
「・・・すー・・・・・・」

誘っておきながら寝始めた私の横に、三郎が同じ様に寝たのを知ったのは
夜中に目が覚めたときだった

結局三食食べずに過ぎた一日を振り返りながら、隣で寝息をたてる三郎に触れる

「・・・ん、あ・・・***、先輩?」
「おはよう。一緒に寝てくれたんだ。」
「・・・・・・、先輩が誘ったんじゃないですか。」
「まさかのってくれるなんて思わなくて。三郎、鍛錬いかない?」

いいですよ。と頷いた三郎は、体力がまだ戻ってない内に鍛錬に付き合ったことを激しく後悔した