39 復帰第一号
「あとはやるから、三郎次君と伊助君は遊びに言っておいで。休日なのにありがとう。」

台車を焔硝庫の前につけ二人にそう言えば
二人は顔を見合わせ、言いづらそうにあの、と声を出す
どうかした?と目線を合わせるようにしゃがめば、三郎次が話し出した

「久々知先輩が、謝ってくれたんです。」
「タカ丸さんは笑って許してましたけど・・・」

伊助をゆっくりと話し出し、二人の声が揃う

「「ぼくたち、許してもいいのでしょうか?」」
「・・・え、なんで?許せるなら許しなよ。」
「よくしてくれた***先輩を裏切るようで・・・」
「戸惑っていたぼくたちをみて、久々知先輩、本当に辛そうに笑って、また謝ってどっか行ってしまって。」

どうしたらよかったんでしょうか?と泣きそうになりながら聞いてくる二人に
なるだけ優しく笑いかける

「次あったら、ぼくたちもう怒ってませんって言えばいいんじゃない?」

少し悩んで、はい。と頷いた二人は、それぞれ自室へ帰っていった

姿が見えなくなれば、さっそく硝石を中へ運び入れていく
黙々と作業していると、入り口に誰かが立ち光が遮られた
顔をあげれば、そこいたのは兵助で
どうしたの?と作業を中断して近づく

「***先輩、すいませんでした。」
「なにが?」
「え、」

首を傾げれば、頭を下げていた兵助がこちらをみ

「委員会を、疎かにしてしまい・・・***先輩に迷惑をかけてしまったことです。」
「別に怒るようなことじゃないから、大丈夫。」
「また、火薬委員に入りたいんです。」
「いいんじゃない?タカ丸君も三郎次君も伊助君も、兵助を許したんだからまた委員長代理をやりなよ。」

帳簿はつけてあるよ。あと、今回罠に火薬を使ったからこの硝石たちは補填。その分の予算は落としたよ。

矢継ぎ早に引き継ぎの作業をしていくのを、兵助が慌てて止めた

「***先輩は火薬委員ではなくなるのですか?」
「ですね。手伝いにはあいてる時間ならいつでもするから。」
「はい。ありがとうございます。」

兵助が一緒に硝石を運び入れてくれたおかげで予定より早く台車を返却して
兵助とわかれ自室へ歩いていれば、ドタバタと後ろから誰かが走ってきて、腰のあたりに飛びついてきた
前に転びそうになったのを踏みとどまり振り向くと
そこにはしがみついて背中に顔を埋めるきり丸の姿が

「どうしたの?」
「・・・***先輩、」
「なに?きり丸君。」
「・・・・・・***先輩の部屋に行ってもいいですか?」
「いいよ。」

じゃぁ行こうか。と前にまわるきり丸の手をつかみ歩き出すと
下を向いたまま大人しくついてくるきり丸は、時々上目でこちらを伺う

なにかあったのは確かだろうが、それがなにかはわからない
ただ、握り返された手は痛いほどつかまれ、握るきり丸の手は力のいれすぎで白い

コソコソとついてくるような二つの気配に、気づかないふりをした