ヒビの入ったグラス 2
通貨に見覚えがなかったから黒い帆船を重点的に沈めてみました。いやー・・・数多の宝石金銀財宝でふつうに働くのがばからしくなった。流石夢気前がいい

「そんなになんだ?やったありがとう。」

ぶっちゃけスーツケースで金持ち歩くとか札束持つより危険な気がするけど、いいのかな、袋に詰めるよりいいのか
なんかバッグがほしいと店に入って手頃なバッグを手にして頭をかく。入るかな、スーツケースの中身。取りあえず買うかと汚れの目立たない黒を選んで、買うためにスーツケースを開けたら店員にぎょっとされた

「・・・えっと、買える?」
「え、あ、もちろんです!」

リュック一つに買ってすぐスーツケースの中身をひっくり返した僕は、既に持っていた着替えを乗せられないことに気づいてスーツケースにいくらか戻す
着替えもほしいと店を出てすぐ横にある服屋でシンプル過ぎるモノトーンの服を何着か買い込んで、余計に入らなくなった金は結局半分くらいがスーツケースに逆戻り
ありすぎるのも困りものだとは思わなかった。金はあればあるだけいいだなんて、定住者だから言えるんだ。僕みたいな放浪者には関係のない話。だからって、いらないわけじゃないんだよ

ドンと道で後ろからぶつかられた。手からスーツケースが奪われたことに気づいて、え、と思わず声が出る。角を曲がって消えていく男は確かにスーツケースを抱えていたので、その姿をしっかり記憶した

「・・・陸の上は、ここでははじめてか。」

走り出した僕はもう人を殺すことしか考えられなくなってる。ちょっとずつちょっとずつ切り取って、ほら、凌遅刑だ?削いだ肉を踏みながら思い出した
路地に追い詰められた男はスーツケースを両腕で抱いて、青ざめ震える。可哀想だけど悪いことしたのが過ちだからさ

「ギャ・・・!ぎ、ぁああ!!い゛い゛い゛い゛!」
「あ〜ちょーいー感じ。もっとちょーだい。」

耳を一度で削いだのはもったいなかったと片耳はスライスするように削ぐ。指はみじん切りよろしく細かくね。発狂した男の足を地面と一緒に氷漬けて、ガチガチ鳴ってる歯を削ぎ切った
剥き出しの神経は自分の息にも痛みを感じるらしく、氷で足をとられたままのたうち回ってる。そういうのすごい良いよ素敵だ

「あ゛!あ゛ー!ぐ、ぅ、ああ、あっ、」

肋骨をなぞるように肉を削いで骨盤を露わにさせて、たまんなくてちょっと勃った。でもあまり叫ばしておくと面倒だから、しかたなく縦に裂いてスーツケースを返してもらった。スーツケースが血濡れ。そのまま海にでれば、血がぴちょんと海面におちてリボンみたいにゆらゆら消えていく

「・・・やっぱ騒ぎになったか。」

遠くに見える人集りから逃げるように飛んだ。