選んだ未来
「把握した。なら、次は・・・」

迫り来るマグマに、若者は緩やかに笑った。それこそが、若者が異質足る所以だろうか

「ふはっ、久しぶりに頑張ってみたら出来るものだね。」

笑いながらマグマ溜まりから生還、いや、生き返った若者に、場の空気はこれ以上ないほどに強張り閃光が走った

「余計なことを・・・!」
「一人じゃァ荷が重いだろォ〜?」
「二人がかりだとまた選び直さないといけないが、その未来は見逃していたということか。」

光線が心臓を貫き、爆発でバラバラに吹き飛ばされる。最近麻痺してきた痛覚をがっつりと刺激され、笑いが漏れた
暗雲立ち込めた空に荒れる波。サイクロンです!叫んだ海兵に合わせるように雷が落ちる。大波が軍艦を襲い、警戒し注意深く再生していく若者を見ていたサカズキは不意を突かれた形となり浚われた

「サカズキ!」

手を伸ばしかけて滑る甲板に足を取られて膝を着いたボルサリーノは嘘だろォと呟いてコツンと鳴った靴音に顔を向ける

「・・・おめェ、一体、何者だァ?」
「私に勝てたら教えてあげよう。」
「ボルサリーノ中将!大きく旋回します!」
「取り敢えずはサイクロンから逃げることに集中しなよォ〜!」
「上手くいくかな?」

その未来なら簡単そうだ。にこりと笑った若者にとっさの行動がとれたのは、一重にボルサリーノが頑ななプライドを持っていないからだろう
跪くように膝を折ったボルサリーノを、若者は笑みを浮かべたまま見下ろした

「何をくれる?」
「落ちたサカズキ含めて全員が助かるなら、わっしのこの身を捧げるよォ。」
「安いね。いいけど。では、殺してもらおうかな。」
「・・・助けて、くれるのかァい?」
「ボルサリーノ中将!避けきれません!!」
「約束は絶対だよ。」

ボルサリーノの指が若者へと向く。放たれた閃光に、若者は目を瞑り死を迎えた
刹那、目を見開いた若者はボルサリーノに向けてにこりと笑う。直後に襲ったサイクロンに、軍艦は容易く飲み込まれていった


「起きたみたいだね。さあ、約束を果たしてもらおうか。」


木片が散らばる海から救助されたボルサリーノが開眼一番見たのは、若者の作った笑みだった