- ナノ -


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 一片の影もない青空は、しかし、建物の壁によって四角く切り取られている。その空を眺めながら飛竜は言った。僕はここで、人を乗せるための飛竜として生まれた。だから外の世界のことはわからないんだ、と。
 飛び出したくはならないか、と竜は問うた。飛竜はかぶりを振る。そうしようと思えばきっとできるけど、引き留める何かがあるんだ。そう呟いて、彼は目を伏せた。


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