- ナノ -


カレー

 小さなころ、母が作ってくれるカレーには星形のにんじんが入っていた。もうこどもじゃないよ。そう言って星じゃない形のにんじんにしてもらったのはいつだったっけ。母はちょっとさみしそうだったけど、もうおとなだもんね、と優しく言ってくれたのを覚えている。
 毎日が辛くてひとり暮らしの部屋で泣いていたら、そんなことをふと思い出した。食欲なんてなかったのに、カレーが食べたくなった。米を炊き、苦労して星の形にしたにんじんをほかの野菜と煮込み、カレーを作った。やわらかくなった星をかじる。辛くない、あたたかな涙がこぼれ落ちた。



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