- ナノ -


314

 あれから随分、時が経った。それでもこの森に戻れば、あの頃のことが鮮明に蘇ってくる。物心ついたときから暮らしていた人の街を飛び出した竜に、竜たち自身のこと、世界のことなど、多くを教えてくれた白き竜がここに住んでいた。しばらくその竜と共に過ごしながら学んだものだ。その白き竜の姿もいまやない。けれども、この場所に来るたび、いつかまたその竜に会うことができるように思うのだ。


[ ]