- ナノ -
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いつか、誰かに届くといいなって思うんだ、と彼は言った。少し照れくさそうに笑っていた。その声も、表情も、竜はありありと思い出すことができる。店に山と積まれた彼の本を見て、竜は呟いた。おまえの願いは叶ったぞ、と。
竜でも到達できない空の向こうで、彼もきっとよろこんでいる。竜はそう信じた。
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