- ナノ -


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 追い風最高、と声がする。どうやら竜の背の上の人間は、後ろから吹き抜けていく風を満喫しているようだ。たしかにな、と竜は頷く。だが少々危なくもある。進みすぎたり、あらぬ方向に運ばれたりすることがあるからな。なるほどねえ、と人間。追い風ともいい友だちになることが大切なんだねえ。
 竜は風を掴みつつ、ぐんぐん飛んでいく。人間は風と握手するように、片手を竜から離してそっと開いた。


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