- ナノ -




 竜がそっとひろげた翼に、雨の雫が落ちる。昔、竜と人とは友であった。だが、いつの頃からか、人は竜をおそれ、遠ざけ、戦火を交えるようになっていた。最後に残った竜は、いまは森のなかで、ただ静かにその身をひそめて暮らす。
 竜の前足にも、雫が落ちた。それは竜の、銀の涙だった。





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