- ナノ -


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 竜は岩山に洞穴を見つけると、どうしてもそこへ行きたくなることがあった。何故だろうか、とても懐かしいような思いがするのだ。小さな頃、記憶にある限り、竜は人の街で暮らしていた。しかしもしかすると、それより前があったのかもしれない。洞穴──それは顔も知らぬ両親と繋がるものなのだろうか。
 知る術もない過去に、竜は思いを馳せる。


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