- ナノ -


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 器用に高い木を登っていく竜がいる。翼を持っているようだが、使わないのだろうか。そう思いながら竜が木登りする竜を見ていると、その視線に気がついた彼はこう言った。僕の翼は滑空用でね。飛ぶにはまず、高いところへ行かなきゃいけないんだ。
 ある程度のところまで登ると、彼は勢いをつけ、宙に飛び出した。素早く翼を広げた彼は、流れるような美しい線を描きながら空を渡っていった。


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