- ナノ -


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 昔、鰯が大好物の竜がいた。空から鰯の群れを狙い、海鳥たちと同じように狩りをしていた。そんなある日のこと。一段と大きな鰯の群れに遭遇した。竜は口を開け、あらん限りの鰯をくわえて素早く空に戻る。さあ食事だと、鰯を食べようとしたとき──くしゃみが出た。それも特大の。
 竜の口から飛び出たたくさんの鰯は空をのぼって、のぼって、のぼって──雲になってしまった。これが鰯雲の起こりだという。


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