- ナノ -


902
  
 季節は駆け足だ。竜上の彼は寒さを感じ、持っていた荷物袋から上着を取り出して羽織った。竜は透き通った色の空を黙々と飛んでいる。
 帰ったら野菜をたっぷり入れた温かいスープを作ろう。彼のそんな呟きに、竜の耳がぴくりと動く。思わず笑い出しながら、もちろん君の分も用意するよ、と彼は言った。


[