- ナノ -


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 夕刻、泣きながら駆け込んだ森の中で、人の子は道に迷った。家に帰れず、歩き疲れて途方に暮れているところに現れたのは、自分と同じくらいの大きさの竜。人の子はその竜に連れられて、森の竜たちが暮らす谷でたのしい時間を過ごした。ふと人の子が我に返れば、そこはよく見知った道の上であった。太陽は家を出た時のまま、橙色の光を辺りに投げかけていた。


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