- ナノ -


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 彼女が読んでいた本から、何かがはらりと落ちた。青い押し花があしらわれた栞だった。拾って彼女に渡し、きれいだな、と竜は言う。彼女は礼を言って、微笑んだ。小さなころによく遊んでくれた竜がプレゼントしてくれた花なの。旅に出たまま戻ってこないけど……この栞を見たら、いつかまた会えるかも、って思えるのよ。
 栞を胸に抱き、懐かしむように彼女は目を瞑った。


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