- ナノ -
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この場所に来たことを忘れないよう、目印になる樹の下に自分の鱗を一枚埋めた。その鱗は今もまだ残っているだろうか。竜は土を優しく掻いた。鱗は埋まっていなかった。代わりに、このあたりでは見かけない白い貝殻がひとつ、土の中から顔を出した。
何となく、貝殻は鱗が何処に行ったのか知っている気がした。竜はしばらく貝殻を眺め、そして、そっと埋め直した。
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