- ナノ -


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 雨粒が地面に点を浮き上がらせる。竜は雨足が強くなる前にどこかへ隠れようとした。しかし、途中でふと止まる。随分、久しぶりの雨だ。急いで行く先も今は特にない。体や翼が少々濡れるくらい構わないではないか。
 雨はしっとりと、大地や緑、それに竜を濡らした。このところの日照りで火照っていた体がひんやりと静まってゆく。竜は心地良さそうに目を閉じた。


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