- ナノ -


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 竜がある村を訪れると、みな一様に取り乱していた。しゃがみ込む者、震える者、走り回る者。訳を聞く竜に、村人たちは声を揃えて言った。竹の花が咲いた! もうおしまいだ!
 竜はぽかんとして言う。竹の花なら百二十年に一度は咲く、と。しかし村人たちの動揺は収まらない。花が咲いたら竹が全部枯れる、これは厄災の前触れに違いない! と誰かが叫ぶのが聞こえた。一日、一年で枯れる花もあれば、百二十年で枯れる花もあるというだけのことなのだが。そんな竜の言葉に耳を貸す者は、いなかった。


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