- ナノ -


864

 旅人がひとり、丘の上から向こうの景色を眺めている。竜は少し離れたところに舞い降りると、歩いて旅人の隣へ行き、同じように景色を眺めた。言葉を交わすことなく、時間は緩やかに流れる。やがて太陽が傾き、山のあちら側へ沈む頃になると、旅人と竜はどちらからともなくお互いへ視線を向け、小さく頷いた。そうして旅人は丘を下り、竜は橙色の空へ飛び立った。


[