- ナノ -


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 ふと背中が軽く感じた。背を撫でて通り過ぎる風もひときわ主張が強いように思われる。何故か。竜はすぐに閃めいた。人を乗せていないからだ。
人間を背に乗せることに戸惑いがあった日々のことを、竜は忘れていない。あれから随分と時が経ち、今は──。
 竜は少し笑んだ。変わってゆくものばかりだ、と。


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