- ナノ -


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 ひと口の水も飲むことのできない日が続いていた。干上がった大地には雨も降らない。竜は飛ぶ力を失っていた。這うように前へ進む。川でも湖でも、水溜りでもいい。水の在処に行き当たることを祈って。
 どのくらい経っただろう。口の端に、何か雫が触れた。一滴、二滴、三滴。いつの間にか気を失っていた竜がはっとして目を開けると、蜂鳥たちが口に含んだ水を竜に運んできてくれていた。少し力を取り戻した竜は蜂鳥たちがやってくる方へと懸命に歩き、小さな泉にたどり着いた。空から見守る蜂鳥たちに、竜は深く頭を下げた。


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