- ナノ -


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 雨上がりのまだ柔らかな土には、何かの生き物の足跡が残っていた。空を飛ぶことは、確かにほとんど、道や地形といったものに左右されずにすむ。しかし、このように、通った証がその場所へ刻まれることもない。
 竜は滑らないように気をつけながら、そっと土の上に降りた。そのまま数歩を進む。そこに他でもない、竜自身の足跡が残った。


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