- ナノ -
857
そこかしこに水溜まりができていた。それも、並大抵の大きさのものではない。まるで巨竜が溶け出してしまったかような──
いや、それは紛れもなく、巨竜の溶けた跡だった。この辺りはもともと、身も凍るような極寒の地。そこに住む竜たちは体がほとんど氷でできていた。いつの頃からかきつく照り付けるようになった太陽に、彼らは耐えられなかったのだ。
他の生き物の姿も見えず、大地は沈黙していた。
[
←
〇
→
]