- ナノ -


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 川に向かって、つまらなそうに石を投げる人間がいる。石は軽妙に水を切る。一回、二回、三回。その小気味のよさ。竜は無意識に、石の立てる音に合わせて首を振っていた。
 人間がちら、と竜に目を遣る。それから、投げた石にも。一瞬の間の後に、人間は頬を緩めて笑い出した。


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