- ナノ -


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 彼女は目の前の光景に目を見開いていた。木や植物が生い茂る中、どう見ても蛹としか思えない塊がそこにはあった。人間の大人以上の大きさで。
 これは竜の蛹だな、と連れ合いの竜が彼女に言った。竜には、小さな頃にははねを持たず、蛹を経て飛べるようになる虫型の者もいる。竜の説明を聞いて、思わず彼女は身を震わせる。虫が得意でないのだ。早く通り抜けよう、と足踏みした。


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