- ナノ -


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 海にぽかりとまんまるな竜が浮いている。腹に大量の空気が入っているようだ。人の子たちが彼に掴まって泳いだり、登って遊んだりしている様子が楽しげで、竜は思わず、空からそのまるい竜に声をかけた。
 僕にできることといえば、空気を吸い込んで体を膨らませることだけなんだ。他の力がほしかった、って長年思ってきたけど、いまはまあ、悪くないかなって。彼は少し照れて、そう言った。


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