- ナノ -


838

 もしかしたら竜は虫刺されしなくていいな、なんて思ってないかと竜が人間に言った。夏の虫を手で払いながら、人間はそりゃ思うよ、というように眉をひそめて竜を見る。皆そう思うようだが、この世界には固い皮を持つ植物さえ貫通してしまう虫がいるほどだ。竜が無事だろうか? 竜はそう言い、煩わしそうに尻尾で体を薙いだ。まさか竜に的を絞って狙ってくる虫もいたりするわけ? 人間は顔をしかめ、竜は苦笑いして頷いた。


[