- ナノ -


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 しかしあれだな、と彼は言った。竜は強いし長生きだし、いつの間にかこの世界にほぼ竜しかいなくなってても不思議じゃない。竜は静かに言葉を返す。わたしたちも不老不死ではないし、不意に死んでしまうこともある。生まれる子も多くはないしな。
 彼は頭の後ろで手を組み、流れる雲を見上げた。それでも、人よりはずっと長くこの世界に存在し続けてそうだ。もしそうなったら……人のことを忘れないでいてほしい。勝手だけどさ。呟くように言って、笑った。


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