- ナノ -


825

 この水の向こうには、よく似たもうひとつの世界があるのかもしれない。水面に映り揺れる月を眺めていると、竜はそんなふうに感じることがあった。もしそうだとしたら、向こうの世界はどうなっているのだろう。鯨は空を泳ぎ、翼竜は海を飛んでいたりするのだろうか。
 水面の自分に向かって、達者でな、と呟く。竜が飛び立つと、片割れのような水面の竜も何処かへ飛び去った。


[