- ナノ -


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 竜が建物と建物の間の小道を覗いている。一緒に追いかけっこをしていた人の子が目の前でするりと小道に入ったのだ。竜の体の大きさでは通れない場所だ。
 人の子はにっこり笑い、竜が手を伸ばしてもぎりぎり触ることのできないところに腰を下ろす。竜はしばらく考えていたが──やがて徐に後ろを向くと、長い尻尾を伸ばして子の肩を優しく撫でた。子はちょっとびっくりした、しかし何とはなしに嬉しそうな顔で、降参したように小道から出てきた。


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