- ナノ -


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 ふんわりと浮かんだ綿雲を見ているだけでも、これまでの様々な思い出が脳裏を過ぎる。仮に、思い出も記憶も全て失ったとしたら、と竜は考える。それは自分を失うということなのだろうか?
 羽ばたきながら、これまでのことを思い返す。羽で風を掴むように、目には見えない記憶を心の中でたぐり寄せて。


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