- ナノ -
809
遠くに懐かしい影が見えた。ずっと昔に離れ離れになった友達。その人間は、少年の日の姿で竜に笑い掛けた。また会えてうれしいよ、と。近づこうとする竜に、しかし少年は、首を振る。そのまま寂しそうに背を向けた。白い霧が彼を包んだ。
気がついてみると、竜は草原に佇んでいた。霧はすっかり晴れている。彼の姿はなかった。
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