- ナノ -


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 思い出し、物語るには、正直なところ辛いものも多くある、と竜は目を伏せて言った。しかし、わたしが見たこと、聞いたこと、経験したこと──それを誰かに話すことこそ、長く生き存えているわたしのすべきことなのかもしれないな。
 聞くよ、と少女は言った。それにきっと、私の他にも聞いてくれる誰かはいるよ。ぜったい。顔を上げた竜は、僅かに微笑んでいるようにも思えた。


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