- ナノ -


805

 日が沈み、夕と夜の境にある薄紫色をした空が広がる。行手には遠慮がちに繊細な三日月が浮かんでいた。ドラゴンさん、ちょっとあのお月さまに寄ってよ、と竜の背の上の人間が悪戯っぽく笑った。お月さまに腰掛けて休んでこうよ。
 竜も笑ったらしい。背から僅かな振動が伝わってくる。月からの眺めは素晴らしいだろうな。竜はそう言って、月を目指すように少し、高く飛んだ。


[