- ナノ -


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 この花、なんていう名前の花なんだろうね、と彼はふいに呟いた。視線の先には黄色の小さな花。蒲公英に似ているが、葉のつき方や花の大きさ、背の高さなどが明らかに違う。
 そうだな、と竜は言った、至るところで見てはきたが。よく見るのに、いや、よく見るからこそ、よく知らないのかな。彼は身を屈めて、その花を優しく撫でた。


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