- ナノ -


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 かつてその数ある建物の中で、泣き、笑い、懸命に日々を送っていた人間たちがいたのだろう。しかし今、それらの建物は水の下で沈黙を守っている。極地の氷が溶け、海面が上昇したのだ。
 大きな窓を、体の長い海竜が悠々と通り抜けていく。竜はしばし、その様子を空から眺めていた。


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