- ナノ -


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 氷のように冷たい雨。竜はその中に、ただ立ち竦んでいた。りゅうなんてきらい。人の子から放たれた言葉が竜の胸に突き刺さっている。子は続けて言った。りゅうはこどもをさらってたべるんでしょ、と。
 子の住む町では、竜を排除することが決まったばかりだった。大人が言って聞かせたのだろう、そうわかっていても。
 冷たい雨は、竜の心の中にまで染み込んでゆく。


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