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 人間なら大人の身長でも軽々と超えてしまうような大熊が、二本足ですっくと立ち上がり唸った。驚く竜を引っ張って、白竜はゆっくり木の向こう側へ後退する。いたずらに彼らの領域へ入るのは褒められたことじゃないわ、と白竜。彼らだって竜は怖いもの。
 迂闊だった。竜が耳を伏せて言った。熊の放つ緊張感が、未だ空気を震わせているようだった。


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