- ナノ -


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 昔、銀の竜がいた。その竜があまりに美しかったので、手に入れようとする人間が後を絶たなかった。ある時、大富豪の雇った人間が竜を捕らえた。するとたちまち、月は夜闇に沈み、星は燻んで、朝露は白濁し、雪は灰色になった。
 多くの人々は過ちに気づき、竜を手放そうとしない富豪からなんとか竜を解放した。世界は再び銀を取り戻した。しかしその後、銀の竜を見かけた者はいない。


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