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 向かいから飛んでくる飛竜の上の人間を見て、竜は思わず声を上げた。人間も竜に気がついたようだ。にっこり笑って会釈する。おかげさまで、この通りすっかり竜に乗れるようになりました。そう言う人間に、よかった、と竜は頷く。彼は昔、竜乗りを怖がる子だった。それでも空を目指す彼に、竜はよく背中を貸していたのだ。彼の恐怖は、人が乗ることで竜たちを傷つけたくないという優しさだと竜は知っていた。だからこそ、もし彼が竜に乗れるようになったなら……
 素晴らしい乗り手になるとわかっていたよ、と竜は彼に言葉を贈った。


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