- ナノ -


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 紅葉の時期に常緑樹を顧みる者はほとんどいない。今を盛りと燃えるような色の葉を踊らせる木々の傍で、ひっそりと佇む緑の木々。少し寒そうな面持ちだと、竜はなんとはなしに思った。
 飛んでゆくと、ひとりの少女が緑の樹の下で本を読んでいた。聞けばよほど寒い日以外は、ここでひとときの読書をしているという。なんだかほっとするの。少女は穏やかに微笑んだ。


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