- ナノ -


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 なるほど、人間に言葉を伝えたいのか。老竜は地に響くような深い声で、ゆっくりと仔竜にそう言った。仔竜は何度も頷く。よほど、届けたい言葉があるのだな、と老竜は少し目を細める。だがしかし、言葉というのは厄介なものだ、伝わらない方がよかったと後悔するかもしれないぞ。
 仔竜の意志は揺らがなかった。それならばその方法を教えよう、険しい道にはなるがな──と老竜は語り始めた。


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