★03.昇華したい気持ちは鉛のように重く

 3年生になって、ホグズミードに行けることになったけれど私はそれに一回しか参加しなかった。だって、女の子と一緒に行くチャーリーを見る勇気なんて到底ない。誘ってみれば良いと友人たちに言われたけれど、彼は人気が高いのだ。気づいたら誰かからお誘いを受けていて、私が入り込む隙なんてどこにもない。
 そのくせ暇なときはチャーリーに構ってもらいに行く、というスタンスだけはやめずに、中途半端な距離を保ち続けていたらついに彼が卒業する日が来てしまった。やだ、いかないで。私が卒業するまであと5年もあるのに。チャーリーは、ドラゴンの研究の道に進むんだろうか。いつから、そんな夢を持っていたんだろう。クィディッチだってあんなに上手いのに、危ない道を選ぶなんて。だけど、その方が彼らしいといえば彼らしい。私は3年間のチャーリーしか知らないからまだチャーリーの事なんて全然わかってないけど、彼が本当にドラゴンが好きなんだというのはとても理解できた。応援したいのに、行かないで欲しい気持ちが邪魔をする。パーシーと何か話してるチャーリーを無理言って着いてきてもらい、二人きりになった瞬間気持ちが抑えられなくなっていた。初めて会った時から、今日までこの人に対する感情は1ミリたりとも変わってはいない。

「私、チャーリーのことが好き」
「……えっ、ナマエ!?」
「ちゃんと、恋愛の意味であなたが好きなの!」

 私の言葉に顔を真っ赤にするあたり、そういう目でみられている自覚なんてなかったんだろう。そりゃあ一度も言葉にしたことはなかったけれど、少しくらいは気づいてくれているものだと思っていた。可愛い後輩、だと思っていた私から告白されてチャーリーは結構困惑気味。そんな様子も様になって見えるのは彼の顔が整っているからかそれとも、私の中で彼が美化されているのか。だけど、その表情の中に申し訳なさが浮かんでいるのだって見逃しはしなかった。チャーリーは優しいけど、同情で付き合うなんて事は絶対にしない。一体どんな言葉で断られるんだろう。シミュレーションは何度もしたけれどそれでも怖いものは怖いのだ。

「……ありがとう」
「へ?」
「俺を好きになってくれて、ありがとう」

 だけど、ごめん。

 チャーリーの顔から、笑顔が消えてつらそうな色がそれを覆っていた。やめておけばよかった、私はこんな顔をさせたいわけじゃなかったのに。私が黙っているとそれに比例してチャーリーもつらそうにするから、頭を振って笑顔を向ければ、次はキョトンとした顔をした。クルクル変わる表情が面白い。

「チャーリーは笑ってなきゃダメだよ!」
「でも、」
「私が好きになったチャーリーはいつも笑顔だったよ!」

 そう強気な態度でいえば、ぎこちないけど笑顔を返してくれた。それでこそ私が好きになったチャーリーだ。

 思えば結構時間を取ってしまった。チャーリーだってもっとほかの人と話をしたいだろうし、会話を切り上げればまたつらそうな笑顔を向けられた。最後の最後に、わがままとして手紙を書いて良いか聞けば、ぱあっと顔を明るくさせてもちろん、といただいた。本当は関係をこれで終わらせるのが良いのかもしれないけど、そんなこと私には出来ない。だってまだ彼を好きなのだから。少しでも長く彼の記憶に残っていたいのだ。チャーリーに、大切な人が出来たらもちろん身を引くけれど。
 友人たちの元へ駆けていくチャーリーの後ろ姿を見て、一年生の時にグリフィンドール塔まで連れていってくれた時の事を思い出した。もう、ここでチャーリーを見ることは二度とない。そう考えた瞬間、抑えていた涙が、涙腺が壊れたかのように溢れ出した。人生で初めての恋だった。叶えたいと思っていなかったといえば嘘になる。だけど、どんなに考えても結局私は振られたのだ。この3年間チャーリーを中心にして私の時間は回っていたのに、一体これからどうすればいいのだろう。どんなに思っても彼が私に振り向いてくれる事なんて無くて、制服の袖が絞れるくらいに湿っても、私の涙が枯れることは無かった。

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