★01.路地裏で見つけた小さな花

 スリザリンの生徒にしては、彼女はよく笑う子だった。

 あいつらにお似合いな、人をばかにした笑みとか企んでいるような笑みとかそんなんじゃなくて、太陽みたいな笑顔。スリザリンの寮がある地下室なんて全く似合わない。廊下ですれ違うたび、授業で出会うたびにいつも思う。どうして彼女はスリザリンなんだろう、って。



 クィディッチの練習をする彼女を見て、ふとそんなことを思い出した。スリザリンは、他の寮とは完全に切り離されているけれど実際仲間内は以外と仲が良さそうに見える。それが純血主義からきているものかどうかは分からないけど、少なくとも俺にはそう見えた。試合のプレイスタイルは別として、現に今練習をしているあいつらはすごくいきいきしている。
 どうやら練習が終わったみたいで、ホウキから下りて地面に足をつけたスリザリンの生徒から痛い視線をプレゼントされる。そりゃあそうだ。どう考えたって誰に聞いたってグリフィンドールとスリザリンの仲は険悪だ。そんなグリフィンドールの生徒の俺が、スリザリンの練習を見ているなんて。だけど実際にはスリザリンを見ていたわけじゃない、「彼女」を見ていた。しかし視線のするどさは相変わらず。寮に戻るか図書館に行くか悩んでいたら、ユニフォームを着た彼女が壁に背をあずけて立っていた。

「グリフィンドールの監督生がどうかした?」
「や、ただの見学だったんだ。お邪魔だったかな」
「お邪魔でもなんでもないし、文句も言わないわよ。私はね」

 わざわざ足を運んだわけじゃないから、なんと返していいか分からなかった。しかし結果として見学してたことに違いはない。私は、と強調した彼女は楽しそうに笑う。そう、この笑顔が、俺の違和感。

「他の子がなんて言うかは分からないけどね」
「でも、君は気にしないんだろう?」

 なら問題ないよ。
 俺のその言葉を理解すると、さらに彼女は笑い始める。何が面白かったのかは分からない。それなのに不快感を感じないのは、きっと彼女がスリザリンらしくないから。

「じゃあ、私は寮に戻るわね」
「うん、疲れてるのにごめんね」
「いいのよ。また話してくれると嬉しいわ、ビル」

 ひらひらと手を振って、駆け足気味に廊下の角を曲がっていく。まさか、彼女が名前を覚えてくれているなんて思わなかった。そりゃあ曲がりなりにも監督生だけど。それは彼女の中に確かに俺という存在がいた証拠で、むずがゆい気持ちと嬉しさが俺の中で生まれていた。

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