★(1461日分の感謝を君に) 最初は俺も、周りと同じようにナマエを見てた。白い肌にプラチナブロンドの髪は、ローブの色も相まって一際彼女を浮いた存在にしていたと思う。それこそ俺とフレッドの髪色とは似ても似つかない。重そうな荷物を一生懸命運ぶ様子がなんだかおかしくて、つい声をかけていた。 「持ってあげようか?」 一度目が合うと、その子はすごく驚いた顔をして逃げるように去っていった。すげー警戒されてる、なんだあの子、面白い。 「おいジョージ、急げよー!」 「フレッド、言われなくても分かってるよ!」 俺たち双子はきっとグリフィンドール。グリフィンドールのカラーは赤、赤毛の俺たちにはピッタリだ。さっきの子はどこにいくだろう。寮のカラーが白、なんてないしなあ。あの雰囲気からしてスリザリンじゃないだろうし、なにより俺の勘がそう告げていた。 「ナマエ・ミョウジ!」 「は、はい!」 一足先にグリフィンドールに組み分けされた俺とフレッドは、グリフィンドールのテーブルであとのやつらの組み分けを予想する。あいつはレイブンクローっぽい、あの嫌味な感じはスリザリンだな。そんな調子で見ていると、最後にあの真っ白な子の名前が呼ばれた。へえ、ナマエっていうんだ。緊張している様子や、組み分け帽子がしゃべるたびに驚く様子からするとマグル出身なのかもしれない。全校生徒の注目を浴びているのが恥ずかしいのか、白い肌はいまや真っ赤に染まっている。フレッドとけらけら笑ってたら、ついに帽子が寮を決めた。 ――グリフィンドール! 俺らの周りは大騒ぎ、そんでもって俺らも騒ぐ。髪を整えながらナマエはテーブルに付いて、上級生と握手をしていた。校長の話を聞いたあとは、俺ら新入生を歓迎するムードに大広間が埋め尽くされる。目の前に出てきたチキンやパイにかぶりつきながらチャーリーと話をして、気づいた頃にはもう胃には何も入らなくなっていた。そういえば、ナマエはどうしてるだろう。 ふと彼女が座ったほうへ目をやると、目の前の豪華な食事に手も付けず俯いている。さっきだって今だって、彼女は常に不安そうにしてる。なんてもったいないんだろう。これから俺たちはホグワーツで魔法を学べる、こんなにわくわくすることはないじゃないか! 俺がナマエを気にかけ始めたのはきっと、放っておけない、そんな単純な気持ちだったんだろう。 ナマエを異性として意識したのは、多分3年生の時。その時俺はハッフルパフの子と付き合ってて、その子のことがすごく好きだったかと言われたら、微妙だった。何度か話したことがあって、明るいやつだし、まあいいかな、くらいの気持ち。いつもは俺、フレッド、リー、アンジェリーナ、ナマエのかたまりで行動してたけど、彼女がいるとなると必然的にそっちとの付き合いも増えてくる。いつものメンツで行動することが少なくなって、なんだか無性にさびしかった。 誤解しないでほしいのは、その時の彼女のことを煩わしいと思ったわけじゃない。だけどさびしさとは別に、俺よりフレッドのほうがナマエと話していることになぜか俺は焦っていた。ハッフルパフとの合同授業で、俺は彼女と、フレッドはナマエとペアを組む。それがアンジェリーナだったらなにも思わないのに、だ。俺だってもうお子様じゃない。そんな俺の気持ちを感づいたのか、向こうから別れ話を切りだされた。 クリスマス・イヴのパーティーで盛り上がっているいつものメンバーを、遠目から見てたそがれている俺にナマエが気付く。飾り気のない彼女にしては珍しくグロスをつけていて、それだけでさらにきれいに見える。男の性か、惚れた弱みか。 「ジョージ、なにぼうっとしてるの?」 「いや、ナマエ、変わったなあと思って」 「そう? そういうジョージは変わらないね」 幽霊みたいだのなんだの言われて、縮こまっていたナマエはいまや俺らの仲間だ。入学当初のナマエに「君は将来ミセス・ノリスをゴブレットに変えたり俺らの悪戯に加勢する」なんて言ったってきっと信じてもらえない。腕を掴んで俺の横に座らせると、きょとんとした顔で俺を見る。 「あと、ぼうっとしてたってのは間違いだな。俺はナマエに見とれてた」 「っ!」 俺の言葉に、白い肌が真っ赤になる。恥ずかしがり屋は相変わらずか。腰に手を回せばナマエはさらに驚いて、フレッドとリーがやいやい言ってくるが全部無視。 「あいしてる」 「こ、こんなところでっ」 「ふたりっきりなら良い?」 「もう!」 恥ずかしさを隠すように怒るナマエの機嫌を取るために、触れるだけのキスをひとつ。今度は耳まで真っ赤にして、いつかその髪まで赤くなるんじゃないかって考えて笑ってしまう。俺のお姫様は怒らせたら怖いから、今度こそこのくらいにしておこう。まんざらでもなさそうなナマエの手を握れば、「他所でやれ!」とフレッドからヤジが飛んできた。そうだな相棒、ごもっともだ。 −−−−−− 365x4+1で1461日ですが、冷静に考えたら4年生の冬では満4年はたっていない。そんなことはノープロブレム。当サイトの約4周年記念に書きました。 ★戻る HOME>TEXT(hp)>again>(1461日分の感謝を君に) |