★4-2.これが、僕達の日常会話

 授業で決闘クラブを行うとは私の思考の範疇を超えていた。だけどどちらかというと実践的な授業の方が好きな私は、周りの女の子たちに比べたら比較的うきうきしていた方だと思う、例としてアリシアは余り乗り気ではなかった。ペアはアンジェリーナに任せようと思っていたのに、ロックハート先生が組み合わせを指定すると言ったので若干テンションが下がったけれど、フレッドとジョージを組み合わせたのはいい考えだと思う。顔も声も性格もそっくりな二人が前に出て、お辞儀をして杖を構える。まるで鏡のような動作に笑いが溢れてしまった。
 だけど、忘れていたけれどこの二人が真面目に授業をうけるはずなどなかったのだった。ポケットからクソ爆弾を取り出して、杖なんて使う気がないのかそこらへんに放り投げていた。先生がやめなさいとか色々言ってるけど聞く気はないらしく、どうしようかとも思ったけど主にスリザリンとレイブンクローの生徒が迷惑そうな顔をしていたので二人に向けて杖を向け、クソ爆弾を取り上げれば手元が空っぽになり双子は同時に黙り、私の方を見て大げさに文句を言ってきた。

「ミス・ミョウジ!素晴らしい!グリフィンドールに10点!」
「あ、ありがとうございます」
「そして!私との決闘クラブのチケットが彼女に今!渡りました!」
「は?」

 得点がもらえたのを喜んでいたら、急に先生が訳の分からないことを言い出し、腕を引かれてみんなの前に立たされた。これは、つまりロックハート先生と私で決闘クラブを行えというのか。最悪だ。こんなことになるんだったら二人の遊びを止めなければよかった。助けを求めるようにフレッドとジョージを見てみたけれど、ざまあみろとでもいうかのようにニヤニヤ笑っていた。どうやら逃げ道はないようだ。
 先生と向かい合ってお辞儀をし、杖を構えて背を向ける。大丈夫、実践系はいつもうまくやってきたじゃない。そう言い聞かせて先生が三つ数えるのに耳を澄ませ、三、という声が聞こえた瞬間踵を返した。

「エクスペリアームス!」

 瞬間、先生の杖が私の左手に収まり、持ち主は向こうの壁まで弾き飛ばされていた。先生のファンは悲鳴を上げてそちらに駆け寄り、グリフィンドールの皆からは歓声が聞こえ、急に腕を引っ張られ双子の腕の中に収まってしまう。どうやら癖なのだろう、毎度のごとく髪がぐしゃぐしゃにされたけど、それほど嫌と思わないのは自分の中でもすっきりしたという気持ちがあったからだろう。
 するとフラフラした足取りで先生が立ち上がり、私の名を呼んだので大人しくそこへ行き、杖を返せば咳払いを一つされた。

「見事な武装解除でしたね。まぁ、私が全力で行っていれば私の方が早かったでしょうが」

 なら最初から全力でやってください、なんて言おうものなら話がややこしくなるので黙っておいた。

「そんな優秀な生徒には、私の手伝いをしてもらいましょう。こんな光栄なことはない!ほら見なさい、そこの生徒は恨めしそうにあなたを見てますよ!」

 どうやら言っても言わなくても話はややこしい方向に転がっていくようになっていたらしい。できるものならそこの女の子と変わって欲しかったけれど、どうやらそれはできないらしい。


***


「お、ナマエおかえりー」
「ジョージ?どうしたの、フレッドは?」
「おいおい、いくらなんでも24時間ずっと一緒にいるわけじゃないぞ」
「どうだか」

 それで、どうして談話室に一人でいるのか聞けば紙ナプキンで包んだ糖蜜パイを差し出してくれた。そういえば、先生の仕事があまりにも憂鬱すぎて忘れていたがもうとっくに規則の時間はすぎており、もちろん夕食だって食べ逃した。自覚した瞬間空腹感に襲われ、糖蜜パイを一口かじれば疲れているからかその甘さがちょうど良かった。

「どんな手伝いしたわけ?」
「ファンレターの返事を書く、サインを描く、あとロックハート先生のプロフィールを覚える。ちなみにライラック色が好きなんだって」
「心底どうでもいいな」

 ちなみに、ジョージの話によると昨日はスネイプ先生に吹っ飛ばされ、さらに言うならハリーが昨日はファンレターの手伝いをしたらしい。そういえば確かに彼は昨日夕食の席にいなかったな。あの苦痛を味わったのかと思うと勝手にハリーに同情が芽生えた。

「じゃあ、私もう寝るから」
「あぁ、おやすみ」

 階段を上がろうと足を踏み出そうとしたその時、ジョージが私の頭を引き寄せ、何かと思えばこめかみにキスされた。

「なっ!」
「顔赤いぞ」

 へらへら笑って男子寮へ続く階段を上がっていくジョージの背中を睨みつけるけど何も起こらない、起こる訳がない。キスされたこめかみ辺りを押さえ、叫びたくなる感情も一緒に押し込んだ。だけど、きっとああいうことをするのは私だけじゃない。
 アンジェリーナ曰くフレッドの方が女の子と付き合った回数は多いらしいけど、そんなのはフレッドとジョージを比べるからジョージが少なく見えるだけである。きっとそこらへんの男の子と比べたらジョージだって多くの女の子と付き合ってるだろうし、付き合ってなくてもきっと頬とかこめかみにキスくらいするんだろう。その大勢の中の一人だと思うと急に悲しくなり、赤くなった顔も徐々に冷めていき階段をのぼって部屋に向かった。
 行動に移さないと何も起こらないということは分かっているけれど、と言っていつも行動に移さないのは、きっと心の中ではそれを理解していないんだろう。なんでも他人まかせ、自分の悪い癖だ。だけど考えても何をしていいか分からなくて、幸か不幸か思いの外深くなってしまった友達という絆が最大の敵だった。

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